賢さん通信27号
餞別に隣の人がくれたのは・・・
こんにちは!株式会社琉球補聴器、代表取締役の森山賢(けん)です。賢さん通信第27号をお送りいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、3月と言えば「別れ」の季節ですが、私には忘れられない別れのエピソードがあります。今から16年前、東京のアパートを引き払う前日の夜の出来事です。
まず、私は西武池袋線の江古田(えこだ)駅近くのアパートに住んでいました。そこは防音もしっかりしている鉄筋コンクリートの建物でした。
当時、私は朝5時に音楽で起きていました。目覚まし時計代わりにプリンスのエンドルフィンマシーンという曲(格闘技K-1のテーマ曲)のCDで起きていました。
ある朝、5時過ぎに突然、部屋のチャイムがピンポーン、ピンポーンと鳴りました。私は誰かが部屋を間違えたのだろうと思い、そのまま無視しました。
翌日、また朝5時過ぎにピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴り、無視していたら、今度は玄関のドアをドンドンドン!ドンドンドン!と叩く音が。また誰かが部屋を間違えたのだと思い、また無視。
そのまた翌日、朝5時過ぎ、ドンドンドン!ドンドンドン!そして、ドアに付いている郵便受けの所から「おーい!!」と呼ぶ声が。私は、眠い目をこすりながらドアを開けてみると、そこには当時の私より少し年上と思われる、35歳くらいの見ず知らずのガテン系の男の人が。どうやら隣人です。「なんですか?」と聞くと、突然「おめえ、うるせえんだよ!」と怒られました。どうやら音楽のことを言っています。しかし、ここは鉄筋コンクリート。爆音でもなく「え?これが聞こえるんですか?」と聞くと「おお!聞こえるよ!」と言われ、「すいませんねー」と謝り、その人は「ふざけんなよ!」と、吐き捨てるように言って部屋に戻って行きました。
次の日の朝5時過ぎ、また、ドンドンドン!と来ました。ドアを開けると同じ人で「おまえふざけんな!おれはな、夜勤なんだ!てめえは起きるかもしれねえけど、おれは寝るんだ!うるせえよお前の音!」と怒られました。隣まで聞こえるとは思えない私は「マジですか?じゃあボリュームそのままだから、部屋に入って聞いてみてください」と、招き入れました。すると、その人はステレオの前で「おお、うるせえな!」と言うので、私は「でも、木造じゃないし、お宅まで聞こえるとは思えないんですよ」と言いました。すると、「じゃあ、おれの部屋来い!」と言われ、お隣の部屋へ。到着すると、かすかに聞こえます。私が「かすかに…」と言うと、「だろお!おれ寝れないんだよ!」と言われ、また「てめえ、田舎どこだよ?」と聞かれたので「沖縄です」と答えると、「おれ青森だよ!」と言われ、なんとなく打ち解け、そのまま終わりました。私も反省し、スピーカーの位置を変えたり、音量を下げたりして、その後は何もありませんでした。
月日が経ち、沖縄に帰ることが決まり、私は引越しに向けて準備を進めていました。引越し前日の夜、部屋のチャイムが鳴りました。玄関を開けたら、あの人です。「お前、引っ越すのかよ?」と聞かれたので、「お世話になりました。明日、沖縄に帰ります」と答えました。すると、その人は「お前、田舎帰っても元気でやれよ。ちょっと待ってろ」と言って部屋に戻り、数分後、段ボールを持ってこられ、「これお前にやるから」と手渡されました。「何ですか、これ?」と聞くと、「家で開けろよ。お前に必要だと思うから」と言われ、「あぁ、ありがとうございます。お世話になりました」とお礼を言って、名前も知らないその人と別れ、部屋の中に戻りました。
そして、部屋でその段ボールを開けてみると、なななんと、そこには大量のポルノビデオが!おそらく20本以上。さすがに沖縄には持って帰らず、気持ちだけいただき、そのまま東京で処分させていただきましたが、私は心が温かくなりました。物がなんであれ、別れを惜しんで?餞別に大事なものを手渡してくれたことがとても嬉しかったのです。この別れのエピソードは、16年経った今でも忘れられません。