賢さん通信23号

小谷一生君とお母さんの愛情

こんにちは!株式会社琉球補聴器、代表取締役の森山賢(けん)です。賢さん通信第23号をお送りいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は、私たちの大切な仲間をひとりご紹介します。彼の名は小谷一生(いっせい)君。入社3年目で現在21歳の一生君は、実は、聴覚障害を持っています。

沖縄ろう学校の出身。聴覚障害をお持ちの方というのは、少し引っ込み思案なところがあったり、シャイで無口な感じの子も多いのですが、彼は、笑顔がものすごくかわいく、そして、すっごくおしゃべり好きなのです。

小谷君と私彼は琉球補聴器に来る前、とあるスポーツ用品店で働いていました。ただ、聴覚障害からコミュニケーションが上手く取れず、悩んでいました。そのとき、実は一生君は琉球補聴器のお客様でもあり、一生君の対応をしていた新垣宏樹君がそのことを聞いて、「それなら琉球補聴器を受験してみない?」と声を掛けたのです。

さっそく一生君と(美容師の資格も持たれている)お母さんと面接をして、そして、一生君が琉球補聴器に入社してくれることになりました。

上に一生君は、ものすごくおしゃべりと書きましたが、実は、彼は言葉がとても豊富で、いろんな表現を知っています。手話もできます。例えば、私とやり取りをしているとき、「賢さん、それは大人の事情ですか?」とか、「賢さん、それは映(ば)えますね」とか、いったいどこで覚えたのかな?という表現をしてくるのです。

また、彼は私たちの目を盗んでは、よくスマホを見ており、皆に怒られたりもするのですが、それでもめげずに頑張っております。

そういう彼のボキャブラリーの豊富さとか、叱られてもめげない、折れない心とか、それから、おしゃべり好きで明るい性格というのは、おそらく、一生君のお母さんの努力があったからだと思っています。

一生君のお母さんとは何度も会ったことがありますが、一度、一生君が子どもの頃に使っていたノートや、子ども頃に勉強をしていたお絵かき帳のようなものを持ってきて、私に見せてくれたことがありました。

そこには、一生君が言葉を覚えるために、テキストの言葉の横にお母さんが書き加えた注釈のようなものがいたるところにありました。例えば「ハト」という言葉、「ハ」の横には、口はこう開けるんだよと、「あ」のときの口の大きさが丸(〇)で書いてあり、「ト」は「お」の口なので、ちょっと縦長の丸(0)が書いてあり、こういうふうに口を開けるんだよと、そういうことがいたるところに書いてあったのです。

それは、一生君の勉強した足跡というか、お母さんの足跡にも見えます。健常者には必要ないような教育が一生君には必要で、それをお母さんが粘り強く、何度も何度も、ありとあらゆる書物、テキストでやってこられたのだと思います。

お母さんはとても厳しい方だったようです。一生君はそのことを明るく笑って話してくれますが、厳しかったんだろなぁというのがすごく伝わってきます。

お母さんは、一生君が学校を出た後にまともな職に就いて、自分一人で生活していけるようにという愛情から、厳しく育てられたのだと思います。

一生君は今、総務部のサポートやお店そのもののサポート、それから環境整備を毎日頑張ってしてくれています。そして、彼には夢があります。一生君は、いつか自分一人の力で接客をして、自分一人の力で補聴器を販売するところまでやりたいという夢があり、いつかそれが叶うといいなと私も思っています。

ときどき、寝坊をして髪の毛を振り乱して「すいませ~ん」と出勤してきたり、トイレから出てきたらチャックが開いていたり、おちゃめで抜けているところもありますが、それがまた人間くさく、周囲を笑顔にしてくれます。そんな小谷一生君をどうぞよろしくお願いいたします。